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人事ブログ

きもの×芸術的思考

1.VUCA

新入社員の皆様、中途で入社頂く皆様、たちばなグループへの入社を心より歓迎致します。

入社にあたり、改めて私たち「たちばなグループ」が進むべき方向性を共有したいと思います。

VUCA(ブーカ)という言葉は聞いたことがありますか?

今の世界情勢を表す言葉として今後頻繁に耳にするであろう言葉です。

「VUCA」とは、

「Volatility=不安定」

「Uncertainty=不確実」

「Complexity=複雑」

「Ambiguity=曖昧」

この4つのワードの頭文字を取った言葉です。

今世界はAIで象徴される第4次産業革命の真っただ中にいます。コロナによってその進化のスピードは加速度的に早まっており、今までの考え方では置いてけぼりになる恐怖感さえ感じます。

そんな中、グローバル企業の幹部達の動きが変わってきています。

2.MBAからMFAへ

いわゆる伝統的なビジネススクールへのMBA(経営学修士)出願数が減少傾向にある中で、美術系大学院等へのMFA(美術学修士)出願数が年々増えています。

又、ニューヨークのメトロポリタン美術館等で実施されている早朝のギャラリートークに参加する顔ぶれも以前は旅行者と学生で占められていましたが、ここ数年はグレースーツのビジネスマンが増えてきているのです。

なぜその変化が起こっているのか?

それは世界のエリート達が論理的思考に限界を感じ、芸術的創造的思考を身に付けようとしているからなのです。

 

もっと分かり易く例を出します。

経営者が意思決定をする際、その思考回路は次のような3タイプに分けられます。

A社長…私の過去の成功体験、失敗体験からXという方針に決める。

B社長…私はあらゆる情報を分析した結果、Xという方針に決めた。

C社長…私はなんとなく、フワッとこれがいいかなと思ってXを決めた。

高度経済成長期における経営では、A社長タイプが多く活躍されました。

社会が必要とする価値観が変わらなければ、過去の体験から判断することが成功への近道だからです。

でも今はVUCAの時代。過去の体験からは答えが出せません。

ですからB社長のように、あらゆる情報から答えを導きだそうとします。しかし、現実はなかなかB社長のように決断することは難しいと私は感じます。

「α+β=成功」というような簡単な経営環境でしたら、αとβを最大化すれば成功につながりますが、VUCAの複雑な時代において、そんな簡単な方程式は存在しません。

 

戦後の日本は他国よりも「安い(価格)」商品を「早く(スピード)」提供することで、為替もあいまって成功してきましたが、今はもうアジア諸国に安さも早さも勝つことはできません。又論理的思考には構造的に限界が潜んでいます。

優秀な経営者になればなるほど、同じ結論を導き出してしまうのが論理的思考の行きつく先であり、商売にとって必須の差別化が生まれなくなってしまうのです。

世界のエリートが目指している社長像は、なんとC社長なのです。その「なんとなく」の判断がより社会のニーズにマッチするように、哲学を学び、美意識を育み、まだ存在しない新しい価値を生み出せる思考回路を身に付けようと努力しているのです。

まだ見ぬ未来の理想の社会を正しく描けるように、より幸せを実感できる商品・サービスを生み出せるように。

 

より良い商品をより安く、より早くお客様の元へ届けることで差別化出来ていた高度成長期はもう終わっています。

1990年年代後半、呉服市場もピークを過ぎ下り坂になった頃ですが、「娘さんをお嫁に出すなら、最低でも喪服と色無地は持たせてあげてください。」というトークがある程度お客様にも共感頂き、購入いただけたと弊社代表 松本が言っていました。

つまり論理的に必要性を伝える事で売れることも多かったのです。

 

しかし今はどうでしょう?

商品構成を見ても明らかですが、当時の売れ筋商品は、訪問着、喪服と言ったフォーマルが大半をしめていましたが、今は小紋・紬といったカジュアルが大半になっています。

ですから販売時に伝えることは必要性(論理的思考)ではなく、どこに着ていったら楽しいか、どうやって着たら快適か、ワクワク・楽しさ(芸術的思考)を伝える事が大切になっています。フラクタルの法則通り、呉服業界も世界の動向も繋がっているのです。

 

しかしどんなに良い商品やサービスがあっても、それを伝えてくれる人・媒体(今は店舗)がなかったらそれはお客様には伝わらず、伝わらない商品・サービスは市場にないのも一緒です。

お客様がまだ知らない、新しい幸せの実感ができる商品・サービスがきものなのです。

 

仮に将来お客様のニーズが変化した時には私たちが提供する商品・サービスがきものから他のモノに変わる日がくるかもしれませんが、私たちはそれをお客様に魅力的に伝えられるスキルを身に着けています。

多くの人が効率を追求し、結果的にAIにとって代わられるスキルを身に付けている間、私たちは人でしか出来ない伝えるスキル、楽しむスキルを身に着けているのです。

 

その世界は正にブルーオーシャンであり、今後無限に広がる可能性のある世界だと思いますが、皆さんいかがでしょうか。

3.文明(科学)と文化

今後はAIや新技術によって、どんどん効率化が進められていきます。

高速通信の発達とXRの進化により、遠隔地から出来ることはどんどん増えていきます。難しい手術も移動せずに受けられるようになります。

最終的には自宅に居ながら全てのサービスを受けることができる究極の便利な環境が整備されるでしょう。

科学の進歩とは論理的思考の積み重ねであり、その世界において人間よりもAIの方が正しい判断をくだせるようになるのは明白です。

AIが人類の知能を超えるシンギュラリティは2045年だと言われています。

そんな世界がやってきた時、人類は何を求めるようになるのでしょうか。

家でも温泉に入れる時代はやってくるでしょう。

しかし『あえて』移動の時間を楽しみ、温泉宿でゆっくりする時間を楽しみたいと感じるようになるのではないでしょうか。

『あえて』手間をかけてきものを纏い、街を歩く時間を豊かな時間にしたいと思うのではないでしょうか。

年間休日は増え、労働時間が減少することで余暇の時間は増えていますから尚更です。科学が進歩すればするほど、人は文化性の高い生活への憧れを抱くようになるのだと思います。

論理的思考はロボットが担い、人類には豊かな人生を楽しめる芸術的創造的思考が求められるようになるのだと思います。

 

誤解を恐れず言えば、論理的思考の行きつく先に待っているのは人類ではなく、AIやロボットです。

そんな未来の人類が求めるのは、文化性の高い豊かな人生を生きている実感です。

ですから私たちは、他の誰よりも人生を楽しめる人になりましょう。

お茶や舞踊や沢山の良き日本の伝統文化を楽しみましょう。

まだその世界を知らない人が私たちの楽しんでいる姿を見て集まることで新しいコミュニティが生まれてきます。

 

論理的思考を超えて、人の感性に訴えられるような商品・サービスを提供できるスキルを未来に向けて培っていくことが大切です。

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